ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」教育研究事業報告書

けたのは、「1つの窓口」を主張するFGSとその主張に沿い組織的統合にまで言及した安保理の理事国であった。FGSと安保理は、政治、人道、開発の各部門を統合することで、「安定化戦略」という極めて政治的なアジェンダを推進しようとしてきた。つまり、ソマリアのように不安定で低開発の国家はテロの温床となり、自国の国益にとって脅威となりうると想定しているからである27。このように、安保理におけるミッションの承認は、人道的側面だけでなく、安全保障の側面から行われるのである。では、仮に上記した『統合的評価と計画に関する手引き』(IntegratedAssessment and Planning Handbook)で示された組織的統合の基準を適用すると、安保理によるUNSOMの組織的統合の決定はどのように評価できるのであろうか。同手引きには、組織的統合を検討する際のチェックリストとして、「DSRSG/RC/HCを含めた組織的統合やミッションと人道機関との目に見える連携によって、紛争当事者、現地住民、そして援助供与国が人道コミュニティに抱くイメージに変化が生じうるか?」という項目を設定されている。この項目をソマリアの情勢に当てはめると、UNSOMに組織的統合を適用するのは不適切であったと考えられる。国連(UNPOS)はソマリア政府(TFGやFGS)を政治的側面から支援してきた。しかし国連が支援する政府はAMISOMと共同で武装勢力の掃討作戦を展開してきた。また、その掃討作戦の最中、しばしば一般市民を巻き添えにしてきた。これにより、政府に反発する武装勢力はもとより、一部の現地住民からも国連の正当性を疑問視されるようになっていた。このような現地情勢を踏まえると、ソマリアに組織的にも統合されたSPMを設置することは時期尚早だったと判断するのが妥当であると考えらえる。(4)結論本研究は、国連ミッションの評価・計画立案過程(IMPP、IAP)を概観したうえで、ミッション設立過程に影響を及ぼす主体とその政治的影響力をソマリアの事例から検証した。その結果、評価・計画立案過程において、ミッションの戦略・組織に決定的な影響を与えるのは安保理であることを指摘した。だが、安保理は極めて政治的な機関であるため、必ずしも人道的見地からミッションの戦略と組織を決定するわけではないことも指摘した。当時の事務総長潘基文と緊急援助調整官バレリー・エイモスはソマリアに組織的統合が図られたSPMが設立されることに懸念を表明した28。IAPでは、「形態は機能に従う」(Form27Collinson, S., Elhawary, S., Muggah, R., Stages of Fragility: Stabilisation and its Implicationsfor Humanitarian Action, HPG Working Paper, 2010.28Labbe, J., In Somalia, Humanitarian NGOs against Integration with United Nations: Interview withJoel Charny,https://theglobalobservatory.org/2013/04/in-somalia-humanitarian-ngos-resist-integration-wi24