ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

本研究結果から、個別化医療の実践のための外来での支援システムと支援方法が明らかとなった。例えば、多職種による「カンファレンス」は個々の患者のニーズを捉えるために多職種による多角的な視点や気づきが生かされていることが明らかになった。また、患者や家族の状況に応じて、様々なタイプの種類の「面談」を展開しながら、患者、家族が体験していることを理解し、それに寄り添い、療法選択やセルフケア援助を実践していた。このような「カンファレンス」や「面談」の根底には、「その人をよく知りたい」「個々に合わせた援助をしたい」という医療・看護哲学が存在していた。腎不全は、慢性病の1つとされている。慢性病の「病い」は、疾患(disease)や病気(illness)などで表現される。疾患(disease)は生物医学的モデルを基盤としているのに対して、病気(illness)は人間の体験が重視される(Lubkin& Larsen/黒江,2002/2007)。慢性病をもつ人へのケアでは、人間の体験を重視する「病気(illness))という用語が、近年用いられるようになった。本研究で明らかになった援助モデルも、「その人をよく知りたい」とその人に関心を寄せて展開される病いをもつ人の体験を重視した個別化援助をモデル化したものといえる。今回明らかにした外来のケアシステムモデルは、実践現場の看護職と研究者が協働で開発したものであるため、実践的な判断や行為の詳細の部分が記載されている。この点が実践学としての看護学に即した内容となっていると考えている。ただし今回の結果は、赤十字のなかのA病院という固有の医療現場における試みを本データとして分析し、テキスト化し、モデル化したため、人的資源やシステムの特徴など異なる条件下で、このケアシステムモデルがそのまま適用できるかどうか、課題は残ると考えている。しかし、慢性疾患患者や高齢者が増加し、入退院を繰り返す現状の中、新たな外来での診療やケア方法が求められている。これまで外来における患者への教育実践をパラメディカルと共に行ったという報告(桜井ら,1999)や、透析導入時期に看護相談を行ったという報告もある(井桁,2010)。また池田ら(2014)は、多職種で患者や家族の意思決定支援に関わる専門外来の設置に関する実践を報告している。これらの報告は、今回私たちが検討し作成した方法と類似しており、新しい外来のあり方を模索することの重要さを示唆している。今回の私たちが検討したケアモデルは、単一の支援方法の提示だけでなく、いくつかの支援方法を有機的に関連させながら、患者の個別の状況に応じた支援が可能になるという特徴を持っている。今後は、今回提示した外来におけるケアシステムモデルの有用性や意義を、患者の変化を通して検証していくことが必要であると考えている。日常臨床のなかで事例研究を通して、これらの課題を検討していくことが可能ではないかと考える。B.多職種が機能するためのモデルとしての可能性今回の結果から、患者や家族の個々のニーズや課題を捉えながら、医師、看護師、臨床心理士のなかで、「今、だれが関わるのが一番よいのか」という選択がなされ、援助41