ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

加しており、看取り介護加算制度創設時の2008年に老人ホーム内で死を迎えたのは33128人だったのが、2015年では81680人に増加している(厚生労働省,2017)。以上のことから、特養で高齢者を看取ることは、徐々に広がっていると言えよう。しかし、特養の看取りを希望し同意した高齢者や家族であっても、最後は病院に搬送されて死を迎えることもあり、その理由の一つに、高齢者の状態が悪化してから家族や親族の希望の変化がある(厚生労働省,2014)。家族は、看取りの時期の医療処置に悩むことが多く、点滴をしないという方針であっても、高齢者が食べられず痩せていく様子を見ていることは苦痛であり、やはり病院に搬送して欲しいという気持ちになることがある。しかし、施設で看取りの対象となる高齢者は、医師に老衰で治療の見込みがないと判断された人であるため、病院においても積極的な治療は差し控えられ、そのまま本人に馴染みのない環境の中で死を迎えることになり、このことが家族の後悔につながりかねない。そのため、家族が、高齢者の老衰や特養における看取りについて十分に理解し、施設で看取る心構えを形成することも、特養の看護の課題と考える。心構えを形成する支援の一つとして、本人および家族に対する、特養の看取りについての説明があり、看取り介護加算の要件の中に、高齢者の施設入所時に高齢者本人および家族に看取り介護指針について説明して同意を得ておくことが定められている(厚生労働省,2008)。これまでに研究者らは、特養に入所している高齢者の家族が、特養の看取りについて理解し、看取りの心構えを形成するための方策として、特養に入所期間中に高齢者が徐々に衰退していくプロセスと、そのプロセスの各時期において行うケアを記載した、「家族が看取りについての理解を深めるためのパンフレット」(以下パンフレット)を作成するとともに、そのパンフレット用いた説明の方法を取り決め、入所時の説明に活用してきた。本研究では、上記のパンフレットを用いた説明を受けた家族が、どのようなことを感じたり考えたのかという説明の受け止め方を、ケア記録を基に質的に分析して明らかにする。この調査結果は、作成したパンフレットとそれを用いた説明方法の効果をとらえる資料となるとともに、入所時の説明の方法や、施設入所時の家族の認識を検討する上で意義があると考える。また、今後、特養の看取りにおいて、施設で死を迎えるための、家族の心構えを形成する支援の検討にも資すると考える。これまで、看取りの時期が近づいた際に家族への説明に関する研究はあるが(山本ら,2012)、施設入所時の説明のあり方を検討した研究は見当たらず、本研究は新たな取り組みと言える。(2)研究方法1研究のデザイン質的記述的研究58