ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

2入所時から先を見通す視点を形成する効果【看取りについて考えなくてはいけないと感じた】家族は、説明を受けたことで、特養が看取りを行っている施設であることや、高齢者が長期的に見ると看取りが近くなっていることを理解できている。そして、本人および家族が、どのように死を迎えるかを考えなければならないと感じていることが読み取れる。また、【本人や家族の思いを考えた】家族は、説明を受けて、本人および自分たち家族が、どのように死を迎えるかを考えなければならないと感じたことによって、本人や家族・親族が、終末期の過ごし方や医療に対して、どのような考えや思いを持っているのかを知りたいと感じ、想像したり、直接確認しようとしていることが読み取れる。これまでに、終末期になってから看取りについて家族に説明する際にパンフレットを用いた効果として、患者の状態の変化がイメージできる(北畑ら,2012)、先々の見通しがついて心構えができる(山本ら,2012)、心の準備ができる(山田ら,2013)といった報告がある。本調査結果でも、説明を受けて看取りに向けた自分の心の準備や、家族間の調整を始めようとしていることから、特養入所時であっても、終末期になってからの説明と同様に、家族に死に至る過程の見通しを持ってもらうことや、心構えの形成に働きかけることはできると考えられた。3看取りの方法の葛藤【終末期にどのような医療処置を希望するか悩む】家族は、高齢者の老衰に伴う身体機能の変化を理解し、そのうえで終末期における医療処置の効果や意味について考え、どのような医療処置を希望するとよいか悩んでいることが読み取れる。また、【今のところ終末期医療に対する希望は決まっている】家族は、現時点における希望を決めることができている状況である。これらのような受け止め方をする家族は、高齢者がこれから徐々に衰え死を迎えることについては理解しているととらえられる。このことから、家族は高齢者の先々をイメージできるとともに、特養の看取りの意味について考え始めているととらえることができ、パンフレットを用いた説明によって、考えを引き出す可能性もあると考える。4看取りに対する家族の準備状態の把握と支援特養の看取りは、過度な医療を行わずその人らしい生活を最後まで送ることを目指すものであり、老衰で死を迎える高齢者にとって必要な支援と考える。しかし、特養で高齢者を看取った家族が、看取り後も医療処置と看取りの場の選択における葛藤を持つ人がいることを報告(那須ら,2014)もある。このように看取り後も葛藤する背景には、高齢者が死を迎えるまでの間に、家族が看取りの方法について納得できていないことがあると考えられるため、看取りに向けては家族の準備の支援が重要である。本研究で明らかになった、家族の受け止め方のカテゴリーは、家族の看取りに関する考えの深さの違いや、看取りに対してどの程度の心構えがあるかといったことが、カテゴリ68