ブックタイトル平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成28年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

ーに表れていると考えられる。そこで、これらのカテゴリーを視点として、説明に対する家族の反応や様子を観察することで、家族の看取りに対する準備状態を捉えることができ、さらにその状態にあわせて支援を検討できる可能性があると考えた。看取りについての説明に対して、【看取りについて考えられないと感じた】ような家族に対しては、罪悪感や自責の念、後ろめたさを軽減するための支援が優先される。そのための方法としては、家族が「特養へ入所したことは良かったのか」「もっと自宅で介護できたのではないか」等、どのような気持ちを抱えているかと、そういった気持ちの背景にある、「本人の言動」や「家族の規範意識・役割意識」を理解することが必要であるだろう。【看取りについて考えなくてはいけないと感じた】【本人や家族の思いを考えた】といった受け止め方をした家族は、入所時から先を見通すことができていると考えられる。そのこで、看取りの状況をより具体的に知ってもらうために、先に亡くなった高齢者の家族との交流の機会を持つことや、亡くなった高齢者を施設が見送る様子を知ってもらう等の支援が考えられる。そのような経験を重ねることで、家族は、特養における高齢者の看取りに関する理解を深めることができ、それによって自分の家族の看取りについて、納得のいく判断ができることにつながるのではないか。【終末期にどのような医療処置を希望するか悩む】【今のところ終末期医療に対する希望は決まっている】といった受け止め方をした家族は、終末期医療や看取り方についての具体的に考えることができ、看取りに対する準備が進んでいると思われる。そのような家族は、今後もさらに考えを深めることで、後悔のない納得できる看取りを行うことができると考えられる。ただ、高齢者を看取った家族が、一度は看取りの覚悟をしながらも、その後の不安から覚悟が揺らぐという報告(坂口,2010)もある。褥そうや肺炎などの状態、本人の苦痛など、その時々の状態の変化によって、家族の中に受けたい医療は、その都度変化することが考えられる。したがって、看護職員は、家族の看取りについての覚悟とともに、その時々で葛藤する心情を受け止めるため、家族に対してなぜそのような気持ちを持つのかを確認することがある。それによって、看護職員は、家族の思いの背景も理解することができるとともに、家族も自らの気持ちを改めて振り返り、看取りに向けた考えをより深めることにつながるのではないかと考える。5入所時に説明する今回の調査によって、入所時において看取りについてパンフレットを用いた説明を受けた高齢者の家族の施設における看取りの受け止め方をとらえることができた。先行研究によると、特養に入所時に看取り指針内容について説明、同意書の取得の時期は、入所時に行っているのは61.4%であり(厚生労働省,2014)、40%近くの施設では施設入所時に説明できていないことが明らかになっている。また鶴若ら(2010)は、入所時に看取りの意向を尋ねることができない理由に、「信頼関係がない」「入所時に行う手続きが多い」「施設における生活のイメージが構築されていない」「死について語ることへのタブ69